2025年10月23日
鈴木ひろ子区議が「介護報酬引き上げを求める意見書の提出を求める請願」への賛成討論を行いました。
2025.10.23 鈴木ひろ子区議
日本共産党品川区議団を代表して、令和7年請願第18号「国に対して次期改定を待つことなく介護報酬引き上げを求める意見書の提出を求める請願」に対する賛成討論を行います。
この請願は、全産業平均の賃上げが2年連続5%を超えているにもかかわらず物価高騰が賃上げを上回り実質賃金はマイナス。この状況下で2024年度介護報酬改定はわずか1.59%に留まり、介護事業者はさらに厳しい経営を余儀なくされ、倒産件数が過去最多となっている。区民の生活と介護事業者を守るために、次期改定まで待たずに、早急に介護報酬引き上げを行うよう国に意見書提出を求めています。
今介護の現場は、多くの事業所が人材不足と経営難で危機的な状況です。職員の頑張りでギリギリのところで踏ん張っていますが、限界を超えて倒産・廃業する事業所は過去最多を更新しています。このまま2027年度の改定まで放置したら、介護崩壊へとつながりかねません。
全国の2024年の介護事業者の倒産件数は173件で過去最多。休廃業・解散も含めると784件にのぼります。倒産のうち、訪問介護が最多の81件ですが、デイサービスも56件と続きます。これは、品川区も例外ではありません。区内で倒産・廃業は訪問介護で5年前から14事業所、デイサービスでも2022年度からわずか3年間で9事業所が廃業、そのうち地域密着型デイサービスが6事業所にのぼり、小規模がより大変なことが分かりました。いずれも約60事業所のうちでこれだけ廃業に追い込まれているのは深刻です。実際小規模デイの責任者は「人材がなかなか確保できず大変。できる限り要支援も受け入れている。経営は何とかトントン。小規模は厳しいです」と訴えます。国の報酬引き上げとともに品川区が報酬を決める要支援1と2の総合事業の報酬引き上げも求められます。
品川区が指定管理者として委託するデイサービスでも8事業者中7事業者と軒並み赤字経営、これは構造的な問題と言わざるを得ません。また、デイサービス以外でも指定管理者モニタリングの中で多くの事業所で深刻な人材不足が訴えられています。
この事態は政治が作り出したものです。介護保険が始まって25年がたちますが改悪の連続でした。介護報酬では、若干、処遇改善加算などが行われたものの、介護報酬の本体は3年ごとほとんど上がらず、逆に2003年と2015年の大幅なマイナス改定によって合計で4~5%も引き下げられています。このことが、介護事業者の経営難と人材不足を引き起こしています。
介護職員の賃金は、わずかな処遇改善加算では追い付かず、全産業平均給与との差がますます広がっています。主要産業平均の賃上げ率は厚生労働省等のデータからすると2023年と2024年で合計約9%、さらに2025年度も5%近くになると予測され、単純計算すると3年間で14%近い賃上げ予測と言われています。全産業平均賃上げ率としても7.2~8.6%。それは物価上昇を下回り実質賃金はマイナスです。それと比べ、介護報酬改定がわずか1.59%。これでは事業所の経営も介護職員の処遇も改善には程遠いと言わざるを得ません。その結果、厚労省調査でも、2023年に全産業平均給与との差が月6.9万円だったものが、24年には月8.3万円と格差が広がり、25年にはさらに広がるという状況です。介護の仕事はやりがいがあるが生活が成り立たない、そのため他産業への流出によってさらに人材不足が加速するという問題となっているのです。
質疑の中で公明党の委員から「6月の骨太方針の中で介護報酬の引き上げを明確にうたっているはず」との質問がありました。確かに骨太方針では、「医療・介護・障害福祉等の公定価格の分野の賃上げ、経営の安定、離職防止、人材確保がしっかり図られるよう、コストカット型からの転換を明確に図る必要がある」と明記されています。高市新総理も「処遇改善につながる補助金を前倒しで措置する」と述べました。しかし、報酬本体の引き上げには言及していませんし、課長答弁でもあったように、国からは期中改定も含めてまったく具体的なことが示されていません。それどころか、政府は来年度に向けて、改悪メニューの検討・準備を着々と進めています。社会保障審議会の介護保険部会では27年度からの次期介護保険事業計画を議論。利用料2割負担の対象拡大やケアプランの有料化、要介護1,2の保険給付外し・総合事業化などが狙われています。そんなことになればますます介護現場と高齢者が追いつめられることになります。だからこそ、自治体から、そして議会から今、声を上げていくことが必要ではないでしょうか。
最後に、公明党の意見表明で、請願の内容は一定理解するが財源が示されないものを区議会から意見書を出すことには賛同できないとの発言について述べたいと思います。
私は、介護保険制度の危機的な状況の根本的な解決のためには、国の負担割合を現在の25%から35%に10%引き上げ、公費負担を5割から6割にするとの共産党の提案を示しました。そして、これはかつて、自民党も公明党も選挙公約に掲げていたことを紹介しました。
自民党は、2010年の参院選公約で「公費負担の増加を図り、介護保険料の上昇を抑制する」と明記。2012年には「介護保険公費60%」増加分の「10%は国が国費で出す」と厚労大臣が答弁しています。公明党は、2010年参院選の公約に「介護保険財政の公費負担割合を現行の5割から当面6割に引き上げ、2025年には介護保険の3分の2を公費で賄うことを目指します」と明記。
公明党の委員は何年も前の公約だと言いますが、公約で目指していたのは今年なのです。
自民党と公明党は、その後この公約は取り下げたということでしょうか。
一度掲げた公約というのは重い意味を持っています。取り下げる場合は有権者に対する説明責任が生じます。理由も示さず取り下げることは説明責任の放棄とみなされます。
取り下げるのではなく、改めて掲げて高齢者も介護従事者も事業所も安心できる仕組みに改善させていくことを呼び掛けたいと思います。
財源についてですが、これは税金の集め方、使い方を転換することで十分生み出せます。大企業の内部留保は13年連続で過去最大を更新し、24年度末637兆円もの巨額のため込みです。富裕層・大企業への優遇税制を改め、応分の負担を求める改革によって十分確保できます。さらに大軍拡が進められ、安倍政権前は5兆円以下だった軍事費が今年度は8.7兆円、さらにトランプ大統領の要求3.5%・21兆円となれば、4倍となります。医療や介護の予算を削減しながら軍事費だけは財源の議論もないまま増額し続けることは許されません。軍事費ではなく、介護や医療、社会保障の充実にこそ使うべきです。
深刻な介護現場の改善へ、2027年度を待たずに、一刻も早く介護報酬を引き上げるよう議会から求めて行こうではありませんか。請願の賛同を呼びかけ、賛成討論とします。
