子どもたちに日本の歴史をどう伝えるか
「つくる会教科書」に出ている本音とは

 60年前の太平洋戦争を「正しい戦争だった」と主張する「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書を「採択しないで」という声が広がっています。どのような団体でどんな活動をしているのでしょうか。

 国際化の中で、国の歴史を子どもたちに正しく教えることがどんなに大事なことかを最近の韓国、中国の発言は示しています。

 品川区教育委員会は7月に、中学校教科書を選定します。今、問題になっている「社会」と「公民」の教科書の内容がどんな記述になっているのかをはっきり知ることが大事だと思います。

戦争を賛美する教科書

 「つくる会」の教科書は、日本国民だけでなくアジア諸国に多大な被害を与えた戦争を反省するどころか日本を守るための戦争だったアジアを開放する戦争だったと主張しています。こんな認識で子どもたちを教育されては国際社会から批判を受けてしまいます。

アジアの犠牲者数
中国  1000万人
朝鮮  20万人
台湾   3万人
ベトナム  200万人
インドネシア 400万人
フィリピン 111万人
マレー・シンガポール 10万人

日本の侵略や加害には 目をふさぐ

 「つくる会」教科書には、侵略や加害の事実を記述していません。

 当時の軍部は、中国で満州国(かいらい政権)をつくり侵略をしていったのですが、この点にはふれていません。一方、「排日運動にさらされてていた日本人の窮状」やそれを解決するために軍部に期待が高まったことなどを述べ、満州事変から日中戦争にいたったのは中国側に責任があるといわんばかりの表現です。

 また、南京大虐殺、731部隊、強制連行・強制労働、「慰安婦」などの加害の事実にはほとんどふれていません。

「大東亜戦争」と表現 する

 当時の政府はアジア開放といいながら朝鮮を日本の支配から開放するとは一言もいいませんでした。東南アジアの占領も戦争遂行のための資源確保に必要でしたから同じです。

 そういう戦争をアジア開放の戦争という意味を込めて「大東亜戦争」といいますが、教科書に「大東亜戦争」という表現を使ったことは今まで一度もありませんでした。その点からも異常です。

国民の存在感のない教科書

 「つくる会」の教科書はすべての時代を通して民衆の記述がありません。奈良時代は農民の苦しい暮らしを万葉集に詠っていますがその紹介がありません。また、近代の明治維新から憲法制定、国会開設までの課程も政府の動きしか書かず、自由民権運動が起こったのに紹介されていません。

これでは、近代国家が出来上がったのは天皇を中心とした支配者の力によるもので、民衆はそれにだまって従ったのだということになり、歴史の事実に反するだけでなく、子どもに歴史の正しい流れを教えないことになります。

 いろんな角度でそれこそ「偏った」記述ですから、教科書にはふさわしくありません。

品川にも「つくる会」 組織が存在

 「新しい歴史教科書をつくる会」はどんなことを主張しているのだろうかーーー、とホームページを開いてみると、各地に県レベルの支部が紹介されてありました。そして、「つくる会品川区部」というものも並んでありました。「代表者」は民主党から都議選に立候補を予定している男性でした。意識して「代表」になったのではなくいつの間にかというような発言をしていました。

人権や権利を否定?

 そして「管理人の独り言」というサイトを読むと、人権や権利の主張を否定する発言が多く、驚きました。例えば、北海道奈井江町は「子どもの権利条例」を制定しましたが、彼は「わざわざそんな条例をつくらなくてはいけないほどこの町の子供は不幸だったのだろうか? んなわけない。つくる動機が怪しいものだ。」と書いています。

 また、条例は「救済機関」を設置していますが、それに対しても「なんてこった! (中略)これじゃ子供は我が侭しほうだい、暴れ放題ですな。大人が子供を指図しようとしたら『権利侵害だ!』『救済機関に訴えるぞ!』なんてことになるわけだ。」

「『暗くなったから早く帰ってこい!』というのも『権利の侵害』か?」

 日本人は外国と比べると権利意識がまだまだ低いといわれています。長時間労働からの解放、政治参加と女性の参政権の獲得など、長い歴史のなかでひとつづつ解決されてきました。

 「子どもの権利」は世界的に明確にされてきたものですが、それを茶化したり、斜めに見たりするのは自ら信頼を断ち切るものです。

 南は、すべての子どもを健やかに育ててほしいという願いに誠実に応えるのが政治を志すもののあるべき姿だと思います。今後も全力を尽くします。