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菊池貞二 菊地貞二ニュース 2001年8月12日発行
第126号

 

区教育委員会傍聴記
ゆがんだ歴史を描いた教科書不採択へ

 教科書は、真理や真実が子どもの発達段階にそって、それにふさわしい内容で記述されていなければなりません。さらに、取り上げられた教材が教育基本法がのべる目的を実現するにふさわしいものであり、社会や自然をとらえる確かな目と豊かな情操を育むものでなくてはなりません。

南京大虐殺・従軍慰安婦まで歴史から消し去る教科書

 これまで各社の教科書が教材としてふさわしいかどうか各教科事に委員会審議が行われ、8月7日品川区教育委員会は臨時会を開催し、来年度小・中学校が使用する教科書を選定し、採択を行いました。傍聴には50名が集まりましたが、実際には10名しか傍聴席がなく、大きな関心が集まる今回の委員会傍聴を制限するなどは、許されることではありません。
 品川区では、区民の運動で仮採択の場に上りませんでしたが、東京都は一部、養護学校の教科書として採択しています。

中学校教科書

 

小学校教科書

教  科 出版社   教  科 出版社
国  語 三省堂   国 語 光 村
書  写 光 村   書 写 光 村
地  理 帝 国   社 会 東 書
歴  史 東 書   地 図 帝 国
公  民 東 書   算 数 東 書
地  図 東 書   理 科 大日本
数  学 東 書   生 活 教 出
理科第1 大日本   音 楽 東 書
理科第2 大日本   図 工 日 文
音楽一般 教 芸   家 庭 開隆堂
音楽器楽 教 芸   保 険 学 研
美  術 日 文      
保  体 東 書      
技  術 開隆堂      
家  庭 開隆堂      
英  語 三省堂      

神話と史実をあいまいにし侵略戦争美化の教科書が検定合格

 海外からも大きな批判を受けた「新しい歴史教科書をつくる会」(扶桑社発刊)の公民、歴史教科書は「侵略戦争の美化」という見過ごすことの出来ない内容を持っています。
 日本の戦争理念は「各国の自主独立、提携による経済発展」だったとし「戦争当初、日本軍が連合国軍を打ち破ったことは、長い間、欧米の植民地支配のもとにいたアジアの人々を勇気ずけた」など全文を通じて第二次世界大戦で、私たちの国がおこなった侵略行為を肯定しています。また、神話の世界である神武天皇を実在した初代天皇であるかのように描くなど戦前、戦中の教育を復活させるものです。
 第二次世界大戦が、日独伊3国による侵略戦争だったという認識と、それへの批判と反省は、日本においても世界でも戦後政治の原点となっています。こうした問題にあいまいな態度をとる事は、日本の民主主義を否定し、国際社会で活動する前提を失うことになります。こうした大前提を公然と否定するものが、現在と未来を担う子どもたちの教科書に値しないことは明らかです。

82年の官房長官談話

 この年、日本政府は官房長官談話で「わが国の行為が韓国・中国を含むアジアの国々の国民に多大な苦痛と損害をあたえたことを深く自覚し、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意」をのべ、その精神は「わが国の学校教育、教科書の検定にあたっても、当然、尊重されるべきものである」としました。それをうけて、検定条項が加わりました。

東京都は養護学校教科書として採択

 こうした政府見解を公式に発表しながら、検定に合格させたこと事態が近隣諸国をあざむくものです。加えて公立で東京都が養護学校教科書として採用したことは重大です。都教委自身が「あの戦争は正義の戦争だった」と子どもたちに教える立場にたっていることを示しています。
 政治的思惑から、養護学校に学ぶ子どもたちをないがしろにした卑劣さに「障害者を踏み台にするのか」と怒りの声が広がったのは当然です。障害者団体や養護学校の教師・保護者らは怒りの談話を発表しています。「障害をもち、あるいは病気と闘いながら勉強している子どもたちに、障害者の人権を蹂躙した時代が正しかったなどいう教科書で私たちは何を教えたらいいのか、胸が張り裂けるおもい。撤回して再検討する事を求める」と語っています。
 歴史をゆがめる教育は許さない運動を更に広げましょう。