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全国ではじめての学校選択制と父母の教育要求

2001年06月01日
日本共産党品川区議会議員 桜井恵子
  1. 導入までの経過と当初の運動
    短時間で一方的に決定
    教職員からの心配の声が続々届く
    当面の運動の方向と模索


  2. 導入された学校選択制の状況
    父母は選択制についてどんな意見をもっているのか


  3. 父母の教育への関心の高まりと教育要求の発展
    選択した学校が期待どおりでない矛盾
    噴出してきた親の要求に応えざるをえない状況
    自民党区議なども要求を口に
    要求を大切にし,子どもを中心とする学校づくりへ共同のとりくみを
    区教育委員会のアンケートによると−

従来の学区域外の公立小学校にも入学できるとする学校選択制(注1)が実施されました。そのことから、党議員団に各方面から問い合わせがよせられています。

本来、父母の教育権から見ると、学校の選択は尊重されべきものと考えられますが、偏差値を基準に学校がランク付けされる日本の入試制度のもとでは、差別、選別を拡大するものとなり、賛成できないことはいうまでもありません。しかし、あまりにも危機的な子ども達の現状、親の学校への不満と強い教育要求など複雑な状況もあり、党区議団は、手探り状態から出発し、議会での論戦、区民との対話や住民運動を進めてきました。実施後2年目、ようやく運動の方向性もつかみはじめたところです。

今年,3月10日に区教育委員会が実施した「プラン21シンポジウム」(注2)には、全国200を超える自治体から参加があり、行政側の関心の高さがわかります。全国的にも拡大していく様相です。

そこで、私達が、学校選択制の実施前、実施後どんなとりくみをしてきたのか、2年間の経験と現在の課題を報告し、みなさんのとりくみの参考にしていただければと思います。

(注1)品川区では、40ある区立小学校を10校づつ4ブロックにわけ、ブロック内ではどこの学校でも選択できる制度。(中学校では,2001年度から実地。全校18校どの学校でも選択できる制度)
(注2)「プラン21」とは、学校選択制と特色ある学校づくりを内容とする品川区の計画。」

1.導入までの経過と当初の運動

品川の概況について若干ふれます。当区は東京23区の南に位置し、人口32万人弱。東海道第一の宿、品川宿のあったところですが、現在は、商店と中小企業の町、特に製造業が中心です。この不況下で、商店も工場も10年間で、およそ6件に1件と激減しております。40の小学校と18の中学校がありますが、入学6歳の児童数は2000年度約1,900人、10年前の6割まで減少しています。(ちなみに私立中学校は7校、生徒数は区外通学生も含めて区立中学校全生徒数の56%ほどです。)

短時間で一方的に決定

今回の学校選択導入は、関係者の意見を聞かず一方的に、しかも短時間で進められました。

区教育委員会はそれまで「品川の教育改革」の1つとして通学区域の弾力化について検討していました。99年6月、教育長が任期途中で交代し、新教育長が就任と同時に、急ピッチで「プラン21」を立ち上げ、約2ヶ月後、教育委員会に提案、わずか2回目の審議の場であった9月28日の教育委員会でこれを決定しました。学校関係者の意見はほとんど聞かず、学校現場にも父母にも説明もないまま、10月の『広報しながわ』で発表しました。そして、2000年度の小学校1年生から、区立小学校を4つのブロックに分け、ブロック内から入学校を選べるという学校選択制が実施がされたのです。

すでに、他の自治体でも学校選択自由化の動きはありましたが、検討のための審議会を設置したり、少なくとも関係者の意見を聞く場を設けて慎重に審議していたのとは、まったく対照的でした。当然、教職員組合をはじめ、新日本婦人の会や民主団体が「審議を尽くせ、関係者の意見をよく聞くべきではないか」と教育長や教育委員会にも緊急要望を提出、委員にも個別に働きかけ、委員会傍聴も積極的に行いました。

結局、9月28日、教育委員会で2回目の審議をしたあと決定したわけですが、教育委員長のまとめの発言では、異例の「実施にあたっての条件」がつきました。区民や教育関係者の働きかけが反映したといえます。以下はその内容です。

深沢委員長

「いろいろ問題点が指摘された。特に手順に問題があったのではないかという厳しい意見があった。

ブロック化については、受験校化する、格差が生じる、背景に統廃合をあるのではないかといった不安や疑問がある。学校関係者だけでなく、地域、PTA・保護者の理解や納得が十分えられるような方法や姿勢を持ってほしい。決まったからつっぱしるのではなく、納得を得るための方法を十分尽くし努力を重ねることが大切だと思う。万一にも底辺校や学級崩壊が生じないようきめ細かい配慮をして運営し、ブロック化が健全に成長するよう要望して承認する。」

その後、区教育行政は、各小、中学校のPTA会長への説明、保護者や子ども達へのアンケートを実施、学校公開を重ねていくことになります。この間の取り組みの中で、教育委員会についても厳しい意見が集中しました。本来、教育委員会は、親や区民の意見をよく聞いて審議する機関なのに、区、行政の意のまま決定。教育委員会の形骸化ではないか、教育委員の公選制も求めていきたいなど区民の声も出されました。

教職員からの心配の声が続々届く

最初に立ち上がったのは、教職員の皆さんでした。都教組品川支部は、学校選択制によって予想される問題点を明らかにして区民への報告会やパンフ作成で広く宣伝をしました。予想される問題点として1)過大規模校と過小規模校をつくりだすのでは2)小学校から学校間格差・序列化がすすむのでは3)子どもと地域の結びつきが困難になるのでは4)学校選択による学校統廃合を推進していくのではなど、子どもと教育について矛盾が拡大していくことの警告を発しました。

同時に全教職員を対象に,学校選択制についてアンケートを実施しました。意見を集約すると,学校選択制には、反対の意向が強く、その理由としては「学校選択制は,いじめ,不登校,学級崩壊など現場が抱える深刻な問題を解決するものにはなりえない」との声や学校現場の意見をまったく聞かず、このような重大な制度を実施することについての批判が集中していました。

当面の運動の方向と模索

党区議団は、区議会報告を配布、11月には『学校選択自由化を考える懇談会』を開催しました。党区議団は、そこで、学校選択制については、試験的に実施した足立区での実例も示し、学校間を競い合わせ、子どもをいっそう競争教育に追い込むのではないか、公教育の性格をゆがめるものになるのでは。本来、学校は、子どもを真中にして教師や親、地域と共同して作っていくものではないか、そのために教育委員会は支援すべきであると問題指摘を行いました。さらに地域と連携を持って、区民の合意で学校づくりと、呼びかけました。そして、「学校選択自由化」を白紙に戻して、区民や関係者の意見を十分聞くべきだと区民宣伝を開始しました。地区委員会に対策委員会も設置しました。

やがて、4ブロックが決まり、その中の10の学校のどこを選んでもいいということが発表されると親達は、さまざまな形で学校の評判を聞きあるき、学校が公開されるというと参加して状況をつかむなどして積極的に,指定校を変更する動きが出始めました。

導入決定後の段階では,民主勢力のなかにも選択を希望する親がでてきました。父母や団体などと幅広い共同が「反対,賛成」で崩されていく事態に、私達のそれまでの呼びかけだけでは十分でないことが,だんだん共通の認識になっていきました。

党議員団や関係者の中でも区や区教育委員会のやり方は確かに問題だし、学校間の競争を一層拡大し、地域との連携も弱まる恐れがあることも十分心配されるが、親を学校選択に「反対はいい親、賛成は悪い親」などと色分けしていいのだろうか。指定校以外を選択した親の気持ちもよく聞いて、十分な区民討論を行うことが大事ではないか、という論議になりました。

そして、親の思いは、子どもをよく育てたいという願いから出ているし、その根本には、今の学校への不満もあるのではないか、みんなでどんな学校にしてほしいのか、どんな子どもに育てたいのか、いっしょに考えていこうと呼びかけを開始しました。選択制についても、父母にさまざまな意見があることを前提に率直に区民的な討論を呼びかけました。

ここで、昨年11月8日付けの朝日新聞に載った、品川区内の当時6年生(中学校には2001年4月から選択制が導入されています)

「僕たちの学校選ばれなかっただね・・・」

品川区に住むマリさん(39)は、小学6年生の長男ユウト君が1年前にもらした一言が忘れられない。・・・ユウト君は「この地域の指定校以外にいきたい」と訴え、マリさんを戸惑わせた。上級生にいじめられたことがあり、その子が通う学校には行きたくないらしい。「僕のような子のために学校選択というのはあるでしょう」と、ユウト君。マリさんには、わが子が困難から逃げているように思えた。しかし、学校の「荒れ」や「いじめ」も気がかりだ。・・・「この目で確かめてみよう」と仕事の合間に地域の指定校と隣接する二校に電話をかけた。・・・結局、親子は指定校を選んだ。昼間、仕事で家を空けるマリさんは、子どもに地域の目が届く、近くの学校が安心できるように思えたからだ。見学の印象は良くなかったけれど、足りない点は、親も一緒になって学校にかかわりつくっていけばいい。マリさんはそうと考えている。

−この事例のように、親も子どもも学校選択制について真剣に悩んでいたのです。

2.導入された学校選択制の状況

次に、実施されている学校選択制の内容と導入後の状況について紹介します。

区教育委員会は、品川の「教育改革」は、中央教育審議会や教育課程審議会の答申に基づいて行うとして、「特色ある新しい学校づくり」と「通学区域のブロック化(学校選択制)」の推進を提案しました。「特色ある学校づくり」は、

1)小、中学校での教育課程の管理の充実(個別学習として指導助手を配置)
2)小学校の教科担任の実施(学校内で交換して実施)
3)小、中学校連携教育の推進(特定の小学校と中学校との連携)
4)小学校の外国語教育の推進(英語など年間5時間)
5)公開授業の実施(中学校で地域の大人と学ぶ)

の5つを内容として例示しました。あわせて、21世紀の新しい校舎を作るとして「施設、設備連絡会」も設置しました。

実際には、「特色ある学校づくり」より通学区域ブロック化(学校選択制)が先行して行われたことから、選択を迫られた親の間で学校のうわさが広がり不安がひろがったのです。

導入後の学校選択は、教育委員会の資料によると、小学校で最初の2000年度に指定校以外を選択したのは、12.95%、翌2001年度は16.21%となっています。中学校では、初年度の2001年度で指定校以外の選択は、24.22%でした。

小学校の場合、2000年度で児童数が2桁増加した学校は3校、2桁減少した学校は4校でしたが、2001年度では、2桁増加したのは6校、2桁減少した学校は7校にもなっており、大幅に2年間にわたって減少した地域では「いよいよ統廃合になるのか」と不安が拡大しています。

父母は選択制についてどんな意見をもっているのか

それでは、親は選択制についてどう考えているのでしょうか。
表で紹介するのは、「学校選択制と品川の子どもと教育を考える会」(都教組品川支部が呼びかけ区内民主団体、個人が参加、2000年3月11日発足、学校選択に賛成の人も反対の人も、いっしょに話し合いながら、子どもと教育を考えていこうという趣旨で結成)の父母アンケートです。

学校選択制についてのアンケート

(小学校4、5、6年生の父母279人からの回答)()は人数

Q選択制について知っているか
ア、よく知っている(40)イ、大体知っている(187)ウ、よくわからない(51)
Q選択制についてどう思うか
ア、よいことだと思う(93)イ、よくないと思う(37)ウ、どちらともいえない(148)
Qよいと思う理由について(アと回答した)上位4
・学習内容や生徒活動、部活動などに特色ある学校が選べるから。
・友達関係を考えて選べるから
・子どもにあった教育が期待できるから
・いじめなどない落ち着いた学校が選べるからなど
Qよくないと思う理由について(イと回答した)上位4
・学校と地域の連携、親同士のつながりが一層困難になるから
・勉強のできる学校とそうでない学校と言う格差ができるから
・生徒が集まらなかった学校は「ダメな学校」というレッテル貼りが行われ子どもの気持ちを傷つけてしまうから
・中学校の統廃合になるから

この結果をみると、選択制への関心は高く、これを支持する親が若干多いものの迷っている親は更に多いこと、選択制について意見は異なっても、子どもの教育を真剣に考えていること、がよくわかります。

3.父母の教育への関心の高まりと教育要求の発展

学校選択制の導入をきっかけにして、指定校以外を選んだ親からも,また従来の指定校を選んだ親からもさまざまな教育要求が出されてくるようになりました。

選択した学校が期待どおりでない矛盾

学校を選択した親の期待には、大きいものがありますが、学校の現実は、そのとおりというわけではありません。

落ち着いている学校だからと思って選択したけれど、イメージとは違っていた。いじめもあると子どもが言っていた、とか、もっとのびのびやる学校と思っていたけれど、管理的な様子がする、などのたくさんの声が寄せられてきています。なかには、音楽のクラブ活動が活発と聞き、胸を躍らせて入学したものの、担当の先生が転任で、クラブが廃止されてしまい、がっかりした、クラブを存続ができないか、との要望がだされるという例もあります。

矛盾が一番でているのは、選択制での児童数の増減によって生ずる問題です。子どもの人数が増えた学校の地元の親たちからは、「1クラスが30人以上となり、1人1人の子どもに目が届きにくくなっているのでは」、「余裕教室でプレイルームがあるので喜んでいたら、子ども達が増えたため、教室になっていくのではかわいそうで」などとという心配の声が寄せられています。

逆に、その近隣校では、2年連続して子どもの人数が減少し専科教員が減少していくなどの問題が出ています。また新1年生が1クラスで7人の学校では、地域から「学校校選択制になって子どもが少なくなる学校は統廃合がされるのではないか」など不安な声が現実味をもって出ています。

噴出してきた親の要求に応えざるをえない状況

指定校でも、そうでない学校でも、どちらかを選んだ親の学校への関心は高く、学校公開の日はもちろんのこと、それ以外の日でも学校に行く親もいます。学校としても「選択される」側ですから、必死で対応をせざるを得えなくなりました。先生達も親切になった、丁寧に説明してくれると、好評です。これまで、親が学校へ行くのは、これまで、学校行事や授業参観や保護者会など限られていましたが、学校の様子が地域に開かれるようになり、学校との会話がひろがりました。こうして親たちは、学校に対して、子どもへの指導の仕方や、クラブの活動、PTA活動、校外指導や、施設などについてさまざまな要望を出し始めました。

そして、各学校から区に対し、子ども達の指導がきめ細かくやれるということで、個別学習のための指導助手について、子ども達の指導がきめ細かくやれるということで、各学校からは積極的に予算要望が出されたり、トイレ改修、クーラー設置、屋上防水などの施設改善の要望も相次いでだされました。

区当局が、これらの要求にある程度応えることで,学校選択制導入への批判が広がることを抑えようとしてきたことは,運動の上で注目すべき点です。2001年度予算では,各学校から出されていた,施設改善や指導助手の配置の予算が増額されました。施設改善の点では、党区議団は、4年前から学校の老朽化実態調査に新日本婦人の会の皆さんとともに取り組み、議会でも積極的に取り上げてきたことが実ったともいえます。

99年の一斉地方選挙で、公明党が「ボロボロではない」共産党攻撃をしたトイレの改修が一気に進み、学校の男女共用トイレの解消、雨漏り防止のための屋上防水、会議室の冷房化について実現してきたのです。また,党区議団は,「特色ある学校づくり」について、「学校の自主的なとりくみにこそ、しっかりしとした予算をつけるべき」と主張してきましたが、結局,教育委員会は、これに対応せざるをえなくなり、ことしの予算委員会の質疑で「教育委員会がプランを練った特色作りだけでなく,学校ごとの特色を生かすことにも支援していく」と答弁せざるをえなくなりました。

自民党区議なども要求を口に

当初、自民党区議は「教育改革について、予算も人もつけずに、行革の考えでやるように」と厳しく注文していましたが、今年の予算委員会では、親や地域の声におされ次々と予算増額の要望をはじめるなど,彼らにも変化が生まれはじめました。ある議員は少人数になった学校にも支援するべきではないかと、いうことまで要求しました。これは,自民党の支持基盤である町会や地域からの突き上げの反映です。

入学式や卒業式では、町会や地域の人たちの話題は、学校選択制による当学校の影響の話です。ある小学校の校長に従来の学区外の町会長が、「あなたの学校へ子ども達が行ってしまい、うちの学校は少なくなった」という話をしたり、一番、子どもの希望が集中した中学校が、特別養護老人ホームとの合築のため全館冷暖房、温水プールが設置されていることから、「うちの学校でも設備をよくしてほしい」など要望がでるなど、もっぱら学校選択制の話しで持ちきりです。誰もが、わが地域の学校を愛しているのですから。当然のことでしょう。

要求を大切にし,子どもを中心とする学校づくりへ共同のとりくみを

私達は,以上のような2年間の中で、変化を目の当たりして学校選択制の導入は,当局の思惑を超えて,父母の教育要求を高めざるをえないという,大きな矛盾を持っていることを体験しました。区や教育行政の意図する「学校選択制」は学校間の競争をさせ、学校の格差や序列化をもたらし、学校や教師への管理強化、ひいては、学校統廃合をねらうという「教育行革」であることは明らかです。しかし同時に、さまざまに出てくる父母の教育要求を実現する運動を前進させれば学校選択制がもたらす現場での問題に対しても、その改善を検討せざるをえない状況を作り出すことができます。

区教育委員会のアンケートによると−

区教育委員会は、昨年4月に、小学校1年生の親に対して、どのような中学校が望ましいですかというアンケートを実施しました。5,154人の回答を紹介します。(複数回答)

1.生徒が落ち着いている(20.47%)
2.進路指導や生徒指導など教育活動が充実している(18.26%)
3.基礎的学力が身につく(16.34%)

でした。

結局、指定校を選択した親も指定校以外の選択をした親も願いは同じではないでしょうか。

今、父母達が望んでいる学校は、子ども達にしっかりとした学力をつけられること、いじめのない落ち着いた学校、クラブ活動、教育活動など熱心に取り組んでいる学校です。だからこそ、子どもたちが通う選択した学校は、しっかりした学校であってほしいと新たな要求が出され始めています。

共産党地区委員会と区議団は、こうした、たくさん出されている願いを大いに語り合い、いまこそ、こども達を中心にして親、教師、地域と共同で学校づくりをしようとよびかけ、2000年11月に教育シンポジウムを開きました。

テーマは、「子どもたちに豊かな教育を―学校選択制と品川の町づくり」。シンポジストとして、佐貫浩法政大教授、大野文博元小学校PTA会長、党区議団を代表して私がそれぞれの立場からで問題提起をしました。各シンポジストからも積極的に、子どもを大切にした運動の呼びかけが行われました。

わたしは、問題提起の中で、本稿でのべた党区議団の論議の到達点を次のようにまとめました。

1.学校選択制については、親の教育権を尊重すべきと考える。学校選択制について親の賛成は多く、期待も強いことについて十分配慮しつつ、今日の日本の入試制度のもとでの格差や差別拡大など学校選択制の持つ問題点も引き続き区民に明らかにしていく。

2.選択制によって出てきた父母の教育要求を積極的に受け止め、実現を求めていく。教育懇談会を旺盛に開催し、子どもの権利条約を実践していく立場で、子どもが主人公の学校づくりを地域と共同で行っていく。

3.少人数学級ができるチャンスを生かし、30人学級の実現の力を合わせて取り組む

シンポジウムには、60人を越える参加者があり、父母、教師、地域の関係者の意見もだされ、1年間の運動の交流ができました。学校選択制の問題点は、引き続いて区民に宣伝していかなければなりません。同時に積極的に教育要求を出し合って、すべての学校で子ども達が生き生きと学び、楽しい学校といえるような学校づくりに参加して行く事の大事さについて共通の理解ができたことは大きな成果といえます。

このとりくみで大変難しかったのは,差別,選別を進める学校選択のねらいがある一方で、親たちの間で学校選択制の望むこと声も多いことでした。この関係をきちんと見て議論を進めることが,運動を発展させるポイントになったと思います。

今、品川区でも、181人の不登校の子ども達もいます。児童虐待問題も深刻な状況も生まれています。今年度から中学生の選択では、単学級が一挙に3校も生まれたり、逆に生徒が集中した中学校では,選択した子ども達が,人間関係で疎外感を感じて転校するなど新たな問題も生じています。子どもと教育をめぐる問題は,社会全体で取り組む大きな課題です。「子どもは社会の宝」、子ども達の願いを大切に親と教師、地域との共同の取り組みを旺盛にし、真の教育改革に向けて一層がんばります。

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