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2004年03月15日 予算特別委員会での論戦

習熟度別学習は効果があるのか、競争から協同の教育を

沢田英次


沢田委員

私は、301ページのプラン21、あるいは小中一貫校にかかわって、1点だけ質問をしたいと思います。

小中一貫校を全区展開をする、その中で、習熟度別学習の占める位置が大きいと思いますけれども、これまでの習熟度別学習をどう展開をしていくのか、区側の考えをお知らせ願いたいと思います。

中島指導課長

現在、プラン21で取り組んでおります習熟度別学習でございますけれども、現在の取り組みの形は、もうすべての小中一貫校での実施という形になっておりますので、来年度も、今年度の各学校の取り組みをより充実していく形で、実際の予算的には継続をする形で取り組んでいく。これは、今の状況の継続という形では、今後も同じ部分と考えてございます。

沢田委員

ちょっとここで別の角度なんですけれども、世界的に見て習熟度別学習というのは、いろいろなところで研究をされて現在に到達していますけれども、世界的に見た検証、あるいは実践がどうなのかということと、それから、習熟度別学習がより優秀だという研究結果は果たしてあるのかという点。説明願いたいと思います。

中島指導課長 

世界的に、習熟度別学習について、このような研究をして、このような学術的なデータがあるというところは、私は把握してございません。

先般、学習指導要領が一部改定になりました。その中には、個に応じた指導の一層の充実というような追加の部分がございまして、具体的に、学習内容の習熟の程度に応じた指導を充実していくというような部分が追加されてございます。

習熟度別学習の充実というのは、日本で申し上げれば、全国的な方向かなという考えがございます。

沢田委員

実は、私も最初は、習熟度別学習は効果があると思っていました。ところが、いろいろな点から、むしろ問題のほうが大きいという指摘が、国際教育学会の中では大きく取りざたされているというのを知りまして、ほんとうに大丈夫なのかなと。私が不十分ながら勉強した範囲で、ヨーロッパで言うと、トラッキングと呼ばれる、要するに能力別学級編成で教育をしている国というのは、ドイツ、オーストリア、スイスの3カ国だけで、その他の20数カ国はみんな平等教育、混合教育とでも言うんでしょうか、そういうふうになっている。それからアメリカも、70年代、80年代は、トラッキングをやっていたけれども、現在はやめていると。その背景には、トラッキングは差別につながるからということも入っていますけれども、効果の点で、やっぱり害はあっても益はないというのが、国際教育学会の定説になりつつあるというのを、私、本で読ませていただきました。

それからまた、NHKで、先日、その問題の特集をやりました。1月ぐらいだったと思うんですけれども、これは後ほど言いたいと思うんですけれども、そのことをドラスチックに証明をしたのが、先日、私どもの本会議で飯沼議員が取り上げた国際学力テスト、OECDのテストだと思うんです。もしこのテストのねらい、結果をどう分析するかということが区側にありましたら、ご説明願いたいんですが。

中島指導課長

今、委員のご指摘いただきましたトラッキングシステムでございますけれども、これは、進学予定者の進路のことをトラックというわけでございますが、これを振り分ける社会構造のことを指していると、私どもは理解してございます。したがいまして、習熟度別学習といった指導システムのことを指しているものではないと、このように判断してございます。

また、OECDの学力到達度調査についてでございますけれども、このねらいは、義務教育修了段階の15歳児の生徒が持っている知識や技能を、実生活のさまざまな場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価するといったことが、読解リテラシーを中心分野として、数学的リテラシー、科学的リテラシーを合わせた3分野で調査したものととらえてございます。

それは、特定の学校のカリキュラムがどれだけ習得されているかを見るものでもございませんし、また、これによって指導方法ですとか、その指導の手段を考察するものでもないと、このように、この調査についてはとらえてございます。

沢田委員

トラッキングは、国際的に研究、ある意味では、研究し尽くされたものであって、先ほど言いましたように、習熟度はトラッキングではないと、それを今どき言うのは、私は大変勉強不足だと思いますね。進路の問題と、習熟度、いわゆる能力別に分けることをトラッキングと、アメリカでは膨大な研究がある。そこを知らないとすれば、子どもたちをここに影響させるものですから、今からでもいいから研究してほしい、勉強してほしいと、まず思います。

後段の国際学力テストの問題をちょっと紹介しますと、15歳以上の、日本で言えば高校1年生、義務教育を終えた子どもを対象に、2000年、33カ国、12万人を対象として行われ、日本も文部科学省がこれに参加した。世界の中でも、トラッキング教育を一番行っていたのがドイツで、小学校4年生のテストの成績で、中等教育は、私はドイツ語は全然わからないんですが、大学エリートコースのギムナジウム、職業技術のレアルシューレ、学力の低いハウプトシューレという三つの学校に分岐して、能力別教育を徹底的にやって、このテスト結果でおそらく1番になるだろうと、世界で注目だった。

ところがやってみたら、1番はフィンランド、2番カナダ、3番ニュージーランド、日本は8位、これは読解力リテラシーですね、何でドイツが21番目になったんだと、プログラム・インターナショナル・スチューデント・アセスメント、発音が悪いかもしれないんですけれども、このPISAという調査で、PISAショックといって、世界にこれが流れたんです。今までは、学力別、能力別に分けて教育をやれば、できる子はできる子なりに、おくれた子はおくれた子なりにジャンプする、これが定説だったけれども、いや、違うんだという結果をこれが示した。要するに、トラッキングの敗北と言われているものです。

先ほど述べましたけれども、NHKのテレビで、なぜフィンランドが平等教育をやっていて、圧倒的にドイツとスイスとオーストリアを引き離して抜群のテスト結果になったかというのを、NHKのテレビで見させてもらいました。あそこは広大な国で、5km圏に小学校一つ、徹底した少人数教育で、平均でも、1学校60人だっていうんです。1980年代に20%の失業率、東欧やソ連が崩壊して、どうにもならなくなった段階で、これからは、子どもたちに教育を重視しようというので、ほかの予算は削ったけれども、教育予算は削らずに、教育委員会の権限を学校と教員に下ろした。NHKのテレビで、私、ほんとうにすごいと思ったんですけれども、先生方が授業を終わってくると、この教え方はどうだ、どう教えたから効果があったかというのを、夜おそくまで真剣になってやっているさまを見まして、ああ、これで教育のパワーというか、命がここにあるというふうに思ったんです。

説明が長くなって申しわけないんですけれども、今、品川区が、例えば学力テストの公開だとか、特色ある学校だとか、あるいは、今度の習熟度別学習の徹底だとか、全体としては競争させていこうと。そうですね、特色をめぐって競争して、学校間で競わせる。学力テストもテストを公開して、それを学校選択でやろうと、こういう方向にいきますと、今世界が到達をしている教育を、習熟度別、トラッキングから平等教育に、そして多様性の中で教育してこそ伸びる子も伸びる、それから学力の低い子も伸びるんだという、この教育実践の研究結果に反すると。

先ほど、須貝委員が子どもを実験台にしてはならないとおっしゃいましたけれども、私は、ドイツ、スイス、オーストリアの敗北が、もし子どもたちに取り返しのつかない学力のおくれや、あるいは、学校内での不登校や非行問題などになったら、一体だれが責任をとるのかすごく心配です。

その点に関して、区は、今度のOECDの学力テストに対して、先ほど、課長は決して一般的な試験ではないと、ちょっと正確じゃないかもしれないですけれども、だけど、この調査は、各国の到達水準を調査し、教育政策に生かすと。単にペーパーテストではなくて、応用能力、リテラシーというのはそうですよね、応用能力をはかって、そういう教育にしてこそ、ポスト産業主義、今までは日本がものをつくって、世界に輸出をするというのが、今みんな空洞化でもって仕事そのものがアジアに流れていっちゃっている。そうすると、知識的な集約というか、それがなければ、今後日本の経済や子どもたちはだめになっちゃう。そういう意味で、私は、〔「質問して」と呼ぶ者あり〕もちろん、指導力の問題、さっき言いましたよ。そういうふうに思います。

私も正直言って、習熟度別学習は効果があると思っていましたから、あまり大きなことは言えませんけれども、ことは子どもたちのため、未来の日本のためなんで、もう一度、国際学力テストの問題について、ご意見をいただければありがたいと思います。

中島指導課長

私どものプラン21の推進、そして、小・中一貫教育の全区展開、いずれも品川区の子どもたちのことを第一に思っての施策と確信してございます。

このOECDの調査でございますけれども、私どもも、この調査の日本での結果の報告に携わった国立教育政策研究所、こちらは本区のプラン21の推進に関しましても、さまざまな先生方に多く連携をとらせていただいている方でございますけれども、そちらのほうといろいろとお話をさせていただく機会がございました。その中で、やはり共通に言えることは、これは施策に反映するというような部分も考えられますけれども、基本的には、教育システムを比較するための調査ではない。ここに出てきているのは一つのデータであって、それをどのように考えていくかというのは、それぞれの国において考えていくことであるというスタンスをとっております。

したがいまして、例えばドイツが今回のことで非常に順位が下がった。それはここに書いてあるとおりでございます。ドイツの教育に詳しいベルリン自由大学のレンツェン副学長の話というような情報では、これは、例えば、親の意識が低いですとか、学習指導要領を自由化したとか、教師の6割が50歳台、60歳台で新たな研修を積んでいないとか、午前中だけしか授業をやっていないで、午後まで授業をやっていないとか、先ほどギムナジウムの話がございましたけれども、能力別、職業を指向した学校をつくって、学ばせているということ以外にも、ドイツが現在抱えているさまざまな原因がそこにあるということで、現在、ドイツでは、総合的な研究組織を立ち上げていると聞いてございます。

つまり、これは、ドイツにしてみれば、職業をある程度見通したギムナジウムですとか、総合制学校ですとか、実科学校ですとか、機関学校とか、さまざまな種類の職業に向けた学校をつくっていく中で、横断する形で行われたOECDの調査の結果であるというようなところで、このように下がってきた事実がある。これは国立教育政策研究所のスタッフの話でございますけれども、そういったような視点もぬぐい去ることはできないというようなことを話してございます。

何度もお答えしてございますけれども、私ども品川区がこれから目指すのは、小中の一貫した滑らかな教育の実現でございます。聞くところによりますと、OECDの調査の第1位となっておりますフィンランドにおきましては、幼小中高を滑らかにするような教育活動が展開されていると、このような話を聞いてございます。まさに私どもが目指している教育の姿がそこにあると言ってもいいのかもしれません。

ただし、その中で、教師がおそい時間まで頑張って、教師の場合にはサービス残業とは言わないのかもしれませんが、そういったことを展開しているということを考えますと、やりすぎもいけません。やはり私どもは、子どもたちの実態、それから、教師の実態、そして何よりも、今私どもが進めている中での子どもたちの育成をベクトルをそろえる形で進めていくのが重要と、このように考えてございます。

沢田委員

先ほど、トラッキングに対しての研究はないとおっしゃいました。ほんとうに勉強したんでしょうかね。世界で、トラッキングの問題は、あらゆる教育学者が研究をした。その一番の研究家は、カリフォルニア大学のオークスという女性の教授です。

そんなに時間はないんですけれども、これまでのあらゆるトラッキングを分析した結果、3ランクに分けて1番上位の一部のみに、適切なカリキュラムが組まれたときのみ有効で、上位の大半、それから、中位、下位、中位は無益であり、下位の生徒は有害だと。こういう結論を出して、アメリカでは中止になった。ほんの一部の州ではトラッキングをやっているところがあるけれども、国全体としては平等教育、黒人も白人も一緒に平等に教育をするという方向に変化をしたのに、この品川区で習熟度別をやろうしているときに、そのことを検討しなかったら、一体だれが責任をとるんですか、こういう結果になったときに。

私もいいと思っていたけれども、実は、私、こういう結論が出たのは、書店で本をずっと見るのが私の趣味ですから、たまたま見ていたら、東京大学の教育方法学の大学院教授が、習熟度別学習がいかに有害であるかということと、さっきの国際学力テストの問題をずっと書いてあって、果たしてこれでいいのかと、子どもがほんとうに将来どうなるかわからない問題が出ているのに、世界の流れはみんな平等教育のほうに移っているのに、品川区では能力別学習のほうにずっと進んでいく、これは急いでいろいろな資料を取り寄せて研究すべきだと思います。

そうしなければ、親に対して、子に対して取り返しがつかない事態になるかもしれない。研究した後で、これが問題なければ、それはそれでいいですけれども、あまりにも多くの問題を抱えているんじゃないのかなと思わざるを得ないと思います。

ただ、今、ずっと言われましたので、これ以上やってもしようがないと思うので、この大学院教授が、最後のところで、それじゃあ、今までの能力別学習から、どういう学習をしたら子どもたち、できる子もおくれている子も、立ち直れるのかということで、こう述べているので、ちょっと紹介だけしておきたいと思うんです。

「すべての子どもが背伸びとジャンプとしての学びを実現するには、どうすればいいのでしょうか。すべての子どもが背伸びとジャンプとしての学びを遂行する授業を行うには、教科書よりもやや高いレベルの内容を設定し、同時に、わからない子の疑問やつまづきを積極的に取り上げる必要があります。教科書よりは少し高いレベルと、わからない子の疑問やつまづきのレベルとの間には大きなギャップがあります。この大きなギャップを、教師と子どもたちが共同で埋めていくのが授業であり、そのような実践によって、背伸びとジャンプがすべての子どもに保障される授業が実現します。共同学習の実現こそがかぎなのです」。

先ほど、スウェーデンのことを言っていましたけれども、滑らかにすることはいいですよ、違うのは能力別学習はやっていないということなんですよ。小学校、中学校、高等学校、大学まで問題ないようにカリキュラムはならしていく、よいものにしていくのはいいかもしれないけれども、やっぱり能力別学習をやったら、学力の特に低い人たちはやっぱり大変なことになると、こういうふうに、私は警告をしたいし、この責任はやっぱり間違ったら大変なことになる、間違えてはならないと思うので、勉強しようじゃありませんか。子どもたちがほんとうにいいのか、どうなのかについて、私自身も勉強したいと思いますし、間違えは許されない課題だということを強調したいと思います。

最後になりますけれども、きょうの新聞で、去年30道府県から今年は43道府県に全国が少人数学級の大きな流れになっている。私は、世界の教育の実践にてらしても、先進国で40人学級をやっているところはないわけですから、少人数学級、小グループの共同の学びの場をつくることを強く求めて終わりたいと思います。

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